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我流オーディオ独り言-6 <YAMAHA NS-30> [我流オーディオ独り言]

↓ ボックス高 1mを超える大型スピーカーシステム YAMAHA NS-30(1967年製・ネット以外はオリジナル)
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↓ JA6002ユニット径は90cm(長辺)、スコーカーユニットでも30cm。 箱枠構造(開放型SPボックス)。
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オーディオ用 YAMAHA NS スピーカーは、1967年暮の発表ですから、もうすぐ誕生して半世紀になります。
現存する個体も、紹介されているブログも少ないせいか、更新頻度の甚だ少ない当ブログにも NSスピーカーを検索して来られる方が後を絶ちません。
結構、初期のNSスピーカー、NS-30(ファミリー含む)に興味をお持ちの方は多くいらっしゃるようです。
今回は、そのような方に向け、少しでも NS-30 の情報を提供したいと思います。




↓ 発表当時の製品カタログ(NS-30、NS-20) 見開きで表示 全16ページ
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Flash版 e-Book では、e-Book形式で拡大してご覧になれます。




この特異な形状のスピーカーからは、一体どんな音が出るんだろうと興味ある方も多いと思います。
・見たことも無いサイズで後ろ向けに取付けられたウーファーしかり。
・蓋の無い箱のような、前面オープンなスピーカーボックスしかり。
・半世紀も前の設計しかり。
現代の高性能なスピーカーとは比較対象にすらならないと一笑されてしまいそうですが、少なくとも検索で来られる方の多くは、NSスピーカー(愛称:ぽんせんべい)の評判を聞きつけ、関心と期待感を持っているものと思われますので、ここでは声を大にして打ち明けましょう。「ちょっと、驚くほど真っ当な音が出るんですよ」とね。



では、少しご解説を。

現代の小振りで高性能なスピーカーの音は、小さな LEDがまばゆく光っているようなイメージがありますよね。LEDの光はきらびやかで透明感が有って、ちょっと眩しいイメージもあります。

対して、NSスピーカーの音は、上の比喩で言うならば、大きな行灯(あんどん)の光とでも言うものでしょうか?
間接照明の光と言ってもいいかもしれません。実際、NSスピーカーは後ろ向けに取り付けられていて間接照明のように反射音をより多く聴かせるような構造になっているのですから。

先に書いた「ちょっと、驚くほど真っ当な音」を、行灯? 間接照明? と言い換えるとかえって混乱させてしまいますかね? LED と行灯の光を比較して、どちらが真っ当かなんて言うつもりもありませんが...。


点音源と面音源

とりあえず、行灯ということで話を進めましょうか (笑)
小さな LED が点光源なのに対し、行灯は広い面光源ですね。
暗い部屋を点光源で照らすのと面光源で照らすのとでは、かなり感じが違うのは容易に想像出来ると思います。

点光源だと、どうしてもその光の点を注視してしまいます。影もクッキリ出ます。音で言えば、音源の位置を意識してしまうという事に繋がるかもしれません。そのことは点音源の定位の良さとして評価されることもあれば、そこで鳴ってる そのスピーカーの音、ひいてはオーディオっぽい音と評される場合もあるかもしれません。
明るくすれば眩しい訳です。音もきらびやかな一方、大きくすると刺激的な音になる傾向もあるでしょう。

面光源の場合はどうでしょうか。行灯でイメージしにくければ、居間のサークラインを思い描いてください。
暗い部屋でも均一に照らすことが出来、眩しくないのが面光源の特徴です。音で言えば、部屋全体に広がって聴こえるのでどこで鳴っているのか解らないというように感じることがあるかもしれません。でも、そんなんで定位は大丈夫なのか???


まぁ、実際にはそんな極端な話にはなりませんけどね。
例えば点音源から発せられた音でも、バッフル板全体が音面として聴こえますし、背面に回り込んで後ろの壁から反射してくる音は面音源の広がりとして聴こえてきます。音源の横の壁からは鏡に反射させたようにして聴こえてくる訳で、無響室でもない限り、結構 反響音の影響は大きいんですよ。

一方、面音源で懸念される定位の問題も、実際には、定位に影響する高音域は小さなツイーターが受け持つ為、きちんと点音源になってるんですよね。

以上で、現代の小さくて高性能なスピーカーの音と、大型の NSスピーカーの音の違いを、何となくでもイメージしていただけたでしょうか?
でも、これだけでは、まだまだ NS-30 の音を具体的にはイメージ出来ませんよね。それはそうです。LEDと行灯の光の違いぐらいしかお話し出来ていませんもんね (笑)


では、実際の NS-30 の音の印象についてもう少しお話ししてみましょう。

小さな点音源のスピーカーでも、音の回り込みや周囲の反響音によって面音源の要素が加味されると書きましたが、NS-30 では、積極的にそういう音空間を創り出そうとしていることに気付かされます。
なにせ、大型の NSユニット(JA6002)は、後ろ向きに取り付けられている訳ですから。照明でいえば、まさに間接照明そのものですよね。オープンな箱(ほとんど枠ですね)の前後方向に、同量の音圧が掛かるように意図されている訳です。後ろから前に回り込んでくる音、後ろの壁から反射してくる音の量が、普通のスピーカーの比ではない事は容易に想像出来るはずです。

このような構造のスピーカーは、NS-20、NS-30とその後継機以外に私は知りませんが、似た構造のものとしては背面解放型スピーカーボックスや平面バッフルが有名ですね。また、後ろ向きにスピーカーが取り付けられたものとしては、開放型ではありませんが BOSE の製品などにも見ることが出来ます。

背面開放型のスピーカーシステムが目指すところは、箱による低音域の増強(共鳴管と呼ばれるバスレフ方式や、密閉箱による太鼓現象)に頼らず、より自然な低音再生を目指すと同時に、部屋の反響を利用した音空間創りも意識しての事だと思います。
ただ、箱による低音域の増強が無い為、サイズの割には低音の力量感は淡白です。ドンシャリ形の音を好む向きには物足りなく感じられるかもしれません。また、音空間創りも、セッティングや部屋の条件で大きく変わりますので安易に期待するのは禁物です。


JA6002 の音

上記のような箱構造に加え、NS-30 は、やはり JA6002と言う巨大な NSスピーカー自体の音色が特徴的です。
普通のスピーカーとの大きな違いは、振動板の振動の仕方。
普通のスピーカーは、フリーエッジで宙に浮いた振動板(発音体)が一体的にピストン運動し、直接空気を押し引きして、空気に粗密の層を作って音にしているんですよね。

一方、NSスピーカーの振動板にはフリーエッジが無く、振動板は直接フレームに固定されているため一体的なピストン運動はせずに、屈曲運動をすることになります。
大きな振動板は、中心付近から周辺部に向かって広がる地震の縦波のような振動波(波紋?)を作り、振動板全体を共鳴させ、それを周囲の空気に響かせて音にします。

大きな振動板は発音体であると同時に、共鳴体(響板)でもある訳です。

このスピーカーの開発にあたり、YAMAHA では、ピアノの響板をヒントにしたと説明しています。
なるほど、グランドピアノを裏から覗くと JA6002に見られる放射状の筋までそっくりなのが確認出来ますね。
Piano.jpgほらね。JA6001-2.jpg

ちなみに、昨今見かける「振動スピーカー」(アンプ付きのユニットで、机などに付けると机全体が共鳴して音の出るスピーカー)が、原理的には近いと思います。振動スピーカーは、なんでも共鳴させる「にわかスピーカー」ですが、NSスピーカーは、専用の共鳴板が与えられた振動スピーカーであると言えると思います。
振動スピーカーの音を聴いた事のある方は、たとえ適当な机がにわかスピーカーになっても、案外まともに聴こえる事や、その場の空気に馴染む心地よい音が出てくるのを実感されたのではないでしょうか?
それは、広い面積の振動板が空気を優しく響かせているからだと思われます。

実は、自然界の発音メカニズムの多くは、こういった共鳴系からの音と言われます。
小さな発音体が直接空気を叩いて出すような通常スピーカーの音(1点から広がる球面波)に対して、大きな共鳴体を介して響かせる NSスピーカーの音(広い面から放射される平面に近い波)は、より自然に感じられ、耳に馴染む、刺激の少ない気持ちのよい音と評される事が多いようです。
まさに Natural Sound と称される所以ですね。



JA6002の音について、もう1点 触れておきましょう。
通常、大きなサイズのスピーカーはウーハーの役割を担いますが、JA6002は、正確に言えばウーハーではありません。上に書いたように共鳴体ですからね。ネットワークにも、ウーハー用のコイルなどを通していないのが見て取れます。ボイスコイルには全帯域の信号がそのまま入力されています。
ですから、JA6002自体からは、かなりの中高域まで出ているはずです。
ところで、JA6002の元になったユニットに JA6001がありますが、こちらは正真正銘のフルレンジです。
JA6001は、YAMAHA エレクトーンの上位機種に採用されていた楽器用ユニットです。下記ご参考。

↓ JA6001ユニット(エレクトーン解体時のもの)
ELECTONE_JA6001.JPGJA6001.JPG

JA6001 と JA6002 の違いは、センターキャップがドーム型ツイーターの扱いになっている JA6001 に対し、JA6002では 同箇所がフェルトで塞がれ高音域がカットされているところにあります。それでも、NSスピーカーならではの共鳴板としては、相当量の中高音を響かせているものと思われます。



NS-30 の音


楽器メーカーである YAMAHA が社運をかけたエレクトーン開発の際に、楽器用途に堪えるスピーカーとして完成させたのが 初代 NSスピーカー JA6001 だったわけです。
響板という発想から生まれた大型振動板スピーカーの奏でる音は、楽器の名に恥じない素晴らしい音で、世界を魅了したのは良く知られるところです。
(ちなみに、楽器って、金管楽器は言うに及ばず、木管楽器ですら相当な大音量で鳴るんですよね。
 NSスピーカーは、それらに負ける事無く、本当に良く響き渡るスピーカーなのです。音圧103db/W)

その JA6001ユニットを元に、オーディオ用途に製品化されたのが NS-30 なんですね。
当時、すでにスピーカーの基本構造は完成されており、スピーカーの開発は、入力信号を如何に忠実に再現出来るかが競われる段階に入っていたと言われます。

しかし、シビアに現実的な話をすれば、現代のハイレゾ対応スピーカーを持ってしても、入力信号に対して忠実な音波形を再現出来るスピーカーなどは存在しないと言われるほど、スピーカーの設計にはジレンマがつきまとうのだそうです。(あちらを立てればこちらが立たずの世界ですね..)

当時の YAMAHA は、オーディオ市場に参入するにあたり、スピーカーに於ける理想の忠実再生などは夢のまた夢と割り切って、すでに楽器用として素晴らしい完成度を持っていた自信作 JA6001をオーディオ用途に流用する事で十分勝負出来ると考えたようです。

オーディオ用初代 NSスピーカーシリーズはこうして誕生しました。
後発の新規参入だったことや、一般家庭に置くには大きすぎるサイズだったことなどで、営業的には成功とは言えなかったようですが、業界を驚かせた独創的なスピーカーが奏でる音の評判は上々だったようです。

しかし、YAMAHA 以外のメーカーは忠実再生をテーマに開発競争を繰り広げていた訳で、違うアプローチで参入して来た新参で異色な NSスピーカーを認めようとしない論調も少なからずあったようです。あんなものは邪道だ、見たいな。

ただ、私見になりますが、忠実再生の度合いなんて、現代の高性能スピーカーを持ってしても五十歩百歩ですし、忠実再生を目指したものの堂々巡りの果てに適当な落しどころに落ち着いた音よりも、最初から楽器としての魅力と個性を持った自信作のスピーカーの方が 製品として魅力があると感じるのは、私だけでしょうか?

ともあれ、NS-30 の音を聴けば、カタログにあるキャッチコピー 「オーディオがついに獲得した自然の音」 「いま、音が生きた」を、確かに、そして今でも 充分実感出来るのです。

NS-30 の音は、とにかく、そういう音なんです。











追加資料:
手持ちの資料を整理してましたら、興味深いものが幾つか出てきましたので以下に追加します。
ただ、ブックマークしてあった旧いページの多くは削除されてしまっており、すでに見れないのが残念。
貴重な資料はブックマークではなく、アーカイブにしておかないといけませんね。
ヤマハでは、「楽器メーカーが音楽を楽しむために作ったスピーカー・システムである」と語り
また、その設計ポリシーを、「この種のウーファーは、ピアノのサウンド・ボードの原理を研究し商品化したわけで、これは従来のスピーカー製造法の原理と約束を頭から否定するところから出発しています。
例えばピアノのサウンド・ボードを例にとるとピアノの響板は打玄された音を面全体で かなり複雑な振動により音を再生する様になっており、それが楽器の自然さや、個性を作っているわけです。
したがってスピーカーにこの原理を採用し、スピーカーの振動板が、非常に複雑な振動を起こしやすい材質、形状、構造を探し、研究開発したもので、リプロデュースするというよりむしろプロデュースするという表現が正しいともいえます。」としています。


NS試聴盤  NS-20雑誌広告


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→ スイングジャーナル 11月号(1969年10月発行)
→ ステレオサウンド 10号(1969年3月発行)













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追伸:
・NSスピーカーに関しては、以前にこちらでも詳しく説明しています。
当方のシステムは、より空間の音創りを強調するセッティングとしています。
・NS-30 をスペアナで測定してみました。→その1 →その2 驚くべき結果ですね。
・当カテゴリー一覧はこちら

タグ:オーディオ
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