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FreeHand _DTP編 [FreeHandで行こう!]

FreeHandで行こう!】その13(使い方-8_DTP編)です。
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入門編が一区切りつきましたので、今回は実践編として、DTPに関する注意事項などを書いてみたいと思います。
一般論は割愛します。FreeHand でDTPを請け負う場合の、必要な設定などに絞って説明します。

calibration.jpg
■DTPやってる方にはお馴染みの、カラースケール。DICのポケットチャート巻頭のパターンに合わせて作ってありますので、お持ちの方は比較しながらカラーモニタの調整にもご利用頂けます。
DTP使用に於いては、カラーキャリブレーションの調整が重要です。FreeHandは、Ver.5から高度なカラーマネジメントに対応しています。

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■カラーマネジメント設定

まず、カラーマネジメントを設定しておきましょう。(システムとデバイスのカラー調整が出来ていることが前提です)
環境設定>カラー>カラーマネジメント で、KODAKデジタルサイエンス または、Apple ColorSync を選択後、「設定」ボタンを押して下さい。上の画像の「カラーマネジメント設定」パレットが出ます。

それぞれの環境に合わせた設定をするわけですが、デフォルト設定よりも、多くの場合「モニタ」は Generic Monitor か、表示モニタのカラープロフィールを選択する方が良い結果になるようです。
画像のシミュレーションは、色分解を選びます。 プリンタは、私の場合10年以上前から Photoshop4Default で統一しています。(Photoshopなどをインストールしてあると選択できるはずですが、無い場合は、システムホルダの ColorSync ホルダなどに適宜ファイルをコピーする必要があります。Acrobat 付属の AdobeCMYK.icmなども使えます。)
ちなみに、PhotoShop 4 Default と Adobe CMYK は同時代のもので中身は同じもののようです。Photoshop 5 Default は、画面表示が若干濃くなります。(後述:PhotoShop 4 Default と Adobe CMYK は若干違いました。RGB画像の再現性が、Adobe CMYK の方が僅かに薄くなります)

いずれも、DICカラーチャートなどと比較しながら、デバイスに対する最適な組み合わせパターンを探って下さい。(カラーマネジメントに決定的なものはありません。ADOBEですら、バージョン更新の度に、設定を見直しているほど、微妙なものです)
・ポイントは、各色10%刻みの諧調を維持しているかどうか(特に100% と 90% の差)
C100+M100列の色味がDICカラーチャートに近似しているか(赤味の弱い紺色になりがち)
・下から2段目は C+M+Y によるグレースケールです。最下段のグレーより暖色系になります。DICにあわせます。

過去に印刷したデータなどがあれば、それに近づけるのも良いでしょう。なるべく、微妙な色合い(色味のかかったグレーに近い色など)の再現性を重視して設定します。どうしても納得いかない場合は、システムのガンマ設定なども微修正してみましょう。

納得いく設定が出たならば、Photoshop や、Acrobat のカラーマネジメントも同じ設定に統一します。


■フォント関連

通常、DTPでは、ポストスクリプトフォントを使うように言われますが、それは OS9環境での話であったり、旧い RIP での処理対応の問題であったりするわけで、OSX環境では、TrueType フォントなども含め、垣根は無くなっています。
特に、フォント埋め込みが標準になったOSX環境と、FreeHand MX との組み合わせでは、フォントにとらわれる必要はありません。(特定の埋め込み不可フォントを除く・WINでも同様)
また、実質、FreeHand の生ファイルを受け付けている製版所は無いと思われますので、入稿は フォント埋め込み済みのEPSファイル対応となる為、その意味でもフォントにとらわれることは無いのです。アウトライン化も不要です。


フォント埋め込み設定は、EPS書き出し時、「設定」ボタンから「EPSフォントを含む」をチェックします。
EPS.jpg
ちなみに、Illustrator CS 以降のバージョンなら、かなり高い確度で FreeHand EPS が開けるようになりました。埋め込みフォントは アウトライン化され、レイアウトは維持されます。(開いたAIファイルでの入稿をお薦めするものではありません)

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また、フォント環境の違う生ファイルを開く場合、Illustrator では、勝手にフォントを置き換えてしまいますが、FreeHand では、フォントを置き換える為の選択画面が最初に表示されるため、「勝手」にではなく、「意図通り」に置き換えることが出来ます。
Font.jpg
OS9で作成した OCFやCIDフォント使用ファイルは、OSX環境で開く場合、同名書体のOTFフォントに確実に置き換えることが出来ます。

Illustrator のバージョン8までのファイルは、かなりの確度で読み込み可能ですので、試しに FreeHand で開いてみるのも一興ですね。OS9環境からOSXに移る場合などにも重宝すると思います。
ちなみに、マルチページに、AIファイルを直接ドラッグドロップも出来ますので、一気に複数ページ物の編集を FreeHand 1ファイルで出来るようになります。
(文字組みに関しては、Illustrator のバージョン違いでも大きく崩れてしまうように、FreeHand に読み込ませた場合も再調整が必要になりますが、意図する書体で開いてくれるのは とてもありがたいですよ。 FreeHand では、テキストは全てテキストボックス仕様になるため、ボックスのサイズによっては文字が溢れる場合があります。 テキストボックスの扱いについては【使い方-6】を参照下さい)



■プリント対応

DTPで使用する限りは、プリンタはPS(ポストスクリプト)プリンタを使用すべきですが、PSプリンタがない場合は、Distillerで作成したPDFで かなり高精度な校正が出来ます。

プリントダイヤログでは、デバイスに PSプリンタ、または Adobe PDFを選びます。(ドライバのインストールが必要)FreeHand MX の設定項目から「詳細」を開くと下のようなダイヤログが出ます。
Print.jpg
まず、PPDが正しく選択されているか確認して下さい。
用紙の設定は右側のタブ「用紙設定」で行って下さい。PPDを使用する場合、メニューのページ設定に優先します。
現在選択されているタブでは、右下にある【プリント時にフォントを作成】をチェックします。(デフォルトではチェックされていません。チェックしたファイルをひな形にすれば、毎回チェックする必要は無くなります)
【プリント時にフォントを作成】がチェックされていると、PSプリンタで、あらゆるフォントをプリントできます。 また、PDF作成時(PSファイルからDistillerで作成する場合)、自動的にフォントを埋め込みます。

PDFも、非PSプリンタへの出力は 色味などがデバイスに依存するため、出力色は あまりあてになりませんが、PS処理された再現性の確認ができます。
Acrobat側のカラーマネジメント設定も、FreeHand のカラーマネジメントと一致させておきます。モニタ上の色再現性が統一できます。(当然、Photoshopなども同じ設定にします。)

PSプリンタは高価な為、個人でお持ちの方は少ないと思います。PS処理は DTPでは必須ですので、最低限、DistillerでPDF校正できるようにして下さい。
Distiller でPDFを作成するには、プリンタダイヤログから PostScriptファイルを作成し、Distiller でPDFに変換します。


■印刷入稿用データ

FreeHand の生データで入稿できる印刷会社は、ほとんどありません。それは、FreeHand データに問題があるからではなく、オペレータが対応できないからです。
FreeHand で入稿するには、下記の要領に従って下さい。

・フォント埋め込みEPSを作成(フォント埋め込み済みと明記)
  (OS9では、フォント埋め込み出来ないため、Illustrator同様にフォント環境を合わせる必要があります)
・「汎用」EPSであることを明記し、Illustratorでは開かないように念を押す。
  (CS以降、汎用EPSも開けるようになりましたが、必ず完全な状態に開けるという保証はありません)
・EPSを配置した AI ファイルを添付するか、Quark または InDesign に割り付けて出力するように依頼する。

私は、上記内容を「お読み下さい」というテキストファイルにして、必ず EPSに同梱します。(念のためプリントも)

なお、FreeHand には自動トンボ作成機能はありません。これは、印刷データを作成するにあたっての儀式として、自分で作りなさいということだと理解しています。トラブル回避を願い、塗り足しなどのチェックをしながらトンボ仕上げをするのです。トンボにはレジストレーションカラーを使用します。トンボはシンボルに登録しておきます。

補足:トンボ作成には、ロックと整列を活用します。Illustratorでは 選択できなくするのがロックですが、FreeHand では 動かなくするのがロックです(選択可)。動かないものを選択し、それに対して整列させれば正確な整列が出来ます。 まず、四隅の断ちトンボを配置してロック。そのうちの2つを選んで、そのセンターにセンタートンボを整列させます。これを繰り返せば正確なトンボが作成できます。FreeHand のロックと整列は、正確な配置をする為に便利な仕様です。 FreeHand のロックは個別に設定・解除できます。トンボなど、動いては困るものはロックをかけたままにします。

オブジェクトに対するトンボの自動作成機能はありませんが、プリント時に 断ちトンボ、センタートンボ、分版ラベルを自動生成する機能はありますので、FreeHand からプリントする際はその機能を利用することが可能です。(上記プリント設定の出力タブ:ラベル/マーク欄のチェックボックス参照下さい)



印刷会社に入稿される Illustrator データの多くは、手直しする必要があると言われています。
デザイナーも、専門のオペレーターがなんとかしてくれると甘えている人が多いように思います。
FreeHand EPSで入稿する限りは、印刷会社では一切手直しできませんので、完全データである必要があります。
DTPに関する知識を総動員して、完全データを作成し、自己責任で入稿して下さい。慣れれば簡単なことです。

ネットの書き込みで、印刷もまともに出来ないようなソフトなどと誹謗中傷する書き込みもありますが、FreeHandは、そのようなソフトではありません。Illustrator同様、完璧ではありませんので若干のバグはあるにしても、DTPにまともに対応できないのは、デザイナーの実力不足によります。FreeHandのDTPで問題が発生するようなことは、まずあり得ませんので安心してチャレンジして下さい。


■オーバープリント

Illustrator も、新しいバージョンではオーバープリントプレビュー機能がつきましたが、FreeHand には、初期バージョンから「オーバープリントオブジェクトを表示」という機能があります。プレビュー表示ではありませんが、オーバープリントのオブジェクトに アルファベットの「O:オー」が重ね塗り表示される為、どこにオーバープリント設定してあるかが一目瞭然でわかります。(TEXTは除く)オーバープリントプレビューだけでは見落としやすい、墨版などのオーバープリントチェックに役立つ機能です。

 ■オーバープリントプレビューだけでは判らない墨版オーバープリントも ご覧のように表示します。
 左側の黒は通常の塗り、右側の墨とシアンがオーバープリントになっていることが一目で判ります。
OverPrint.jpg
オーバープリントチェックは、環境設定>表示 で設定できます。入稿前にはチェックする習慣をつけて下さい。
ちなみにオーバープリントプレビューは、PDFの同プレビュー機能が利用できます。

ちなみに FreeHand では、墨版100%のテキストはオーバープリントがデフォルトです
また、オーバープリントオブジェクトの塗りを、白に変更するとオーバープリントは自動でキャンセルされます。無用なトラブルを回避する嬉しい配慮です。(Illustrator では、白でもオーバープリントしてしまいます。白抜きにしたつもりが、印刷できなかったと言うトラブルは良く聞きますね。配慮の無いトラブルメーカーです。)


■ラスターエフェクト →付録-2に追加情報

FreeHand のラスターエフェクトは、基本的に WEB 使用が想定されている為、解像度は72dpiデフォルトです。
ただ、解像度指定できるため、300dpi以上に設定すれば DTP使用も可能ですが、下記に注意して使用して下さい。
・ラスターエフェクトはRGBで内部処理される為、墨版に重ねての使用は避ける。(境界が汚くなります)
・高解像度で広い面積に対してラスター処理すると、EPSプレビュー書き出し時にエラーを発生。
 (そのような場合は解像度を下げるか、部分的にラスタライズして埋め込み画像をCMYK化して下さい。)
・必ずPSプリンタか、Distiller 書き出しの PDF でチェックを行って下さい。


■パレットなど

最後に、効率的に作業を進める為に、私のパレット環境を紹介しておきましょう。参考になれば幸いです。
palette.jpg

実際には20inch×2のダブルモニタ環境に、全てのパレットを常駐させていますが、全体をスクリーンショットすると小さくなりすぎますので チョイスしてみました。

・私の場合、右のモニタが作業画面、左のモニタがパレット画面です。
 パレットの右側ほど、使用頻度の高いパレットを配置しています。
 モニタが狭い場合は、ツールから色見本までのパレットを常駐させれば作業できると思います。
 色見本は、チップのみにも出来ますが、出来れば%表示させたいところです。(特色などは表示が変わります)
・色見本パレットは、デフォルトでは 色は登録されていないので、汎用的に使用する色を登録して下さい。
・上のテキストツールバーとインフォメーションツールバーは、表示ページの上端に置きます。
 テキストの状態や、オブジェクトの状態、選択数などが一目で分かります。
 いらないツールは省き、ページ複製ツールやページ削除ツールなどを追加しています。
・右端のツールパレットには、よく使う「整列」ツールを追加しています。

ツールバーのカスタマイズは、ウインドウ>ツールバー>カスタマイズ です。不要なツールを削除する方法は、コマンドキーを押しながらドラッグアウトします。


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Illustrator での DTP 一辺倒になった現在、あえてFreeHand を薦めるのは、まだまだ FreeHand の方が優れている面が多いと確信できるからです。(過去の記事を参照して下さい)
心ない人たちによる偏見や誹謗中傷で、悪口をたたかれることの多い FreeHand ですが、両方のソフトを公平に理解している人の多くは、FreeHand の方が優れている部分が多いと口を揃えるのも、また事実です。 シェアで圧倒的な差のある WIN と MAC の関係にも似た部分がありますが、最近の Apple は頑張ってますね。Macromediaにも頑張ってほしかったナ。

「FreeHandが、判りにくいとか使いにくいとか言う意見は、 Illustratorの方が良いはずだと思い込んでいる者が、Illustrator流のやり方で、ほんの少し触っただけで結論だしている」との書き込みもありました。全く同感。違う流儀を押し付けて、FreeHand の真価が解るはずもありません。WINの流儀では、MACが使えないのと同じです。先入観無しに、素直な感性でツール操作すれば解るはずなんですけどね。不可見真実付和雷同。

国民性の違いからか、ドイツでは FreeHand とIllustrator のシェアは日本の逆だそうです。国家検定にも採用されているとのことでしたから、ADOBE の FreeHand 開発終了発表は、ヨーロッパでの影響が大きかったようです。(一時期、Adobe Europe は、それらに配慮し FreeHand の開発継続を約束するコメントを発表していましたが結局撤回してしまいました)


20年の歴史を持つ素晴らしいアプリケーション。最新の Illustrator CS3よりも、今なお優れていると言える先進性、完成度の高さ、ユーザーフレンドリーな配慮など、眠っているFreeHandをお持ちなら、それはあなたにとって、Illustrator よりも良き友人になり得る宝物かも知れません。ぜひ本気で向かい合って、あなた自身で判断してみて下さい。
この連載が、その手助けになりますように。


次回は、FreeHand の真骨頂、FLASHと組合せての使い方です。 →FLASH編はこちら


追記:総集編を作成しました。 →総集編はこちら


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※文中、キーボードの、コマンド、option、comtrol 表記は、MACのものです。WINの場合は表記が異なりますので推察して下さい。マウスクリックも、2ボタンの場合 操作が変わるようです




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シリーズを続けています。 初めてお越しの方は、総集編か、カテゴリーTOPからご覧下さい。
   →総集編 では、FreeHand の真の実力をご覧頂けます。
   →続・総集編 は、総集編の続編です。総集編と合わせてご覧下さい。
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   →FreeHand VS CS4 では、最新版の Illustrator CS4 と比較しています。どうよ。
   →FreeHand VS CS5 では、最新版の Illustrator CS5 と比較しています。どうよ。どうよ。
   →FreeHand_入門編 Illustrator の作業が、FreeHand ではこんな感じ。
   →FreeHand_番外編 実践的に使える裏技テクニックほか、様々な情報を提供しています。

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